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2012'04.11.Wed

真剣に

今日は外壁洗浄に行ってきました。
ちょうどどしゃ降りだったので。

毎回、季節が変わる度に
「さあ、春夏秋冬を満喫してやるぞ」
と思ってます。
しかし結局、春は花見して終わり、夏は海いって終わり、秋は紅葉見て満足、冬は雪を触ってああ寒いで終わり。
ひとつも満喫してないわけです。
「それなりにイベントを楽しんでるじゃねえか」と言われる方がいらっしゃるかもしれませんが、違うんです。
イベントとは全く別の一日。なんでもないどうでもいい一日を満喫したいんです。
春は一人で桜並木を眺めてみたり。夏は一人でドライブしてみたり。秋は焼き芋してる人たちを遠目に眺めたり。冬はこたつでそのまま寝たり。
誰にでも一人でもできる、そんなことを満喫したいんです。
しかし感性がねじくれているのか、誰も理解してくれる人はいない。
だから大衆的なイベントで我慢するしかなくなるわけです。

・・・ま、楽しいからいいっちゃいいんですが。


傲慢

一.

ようやく五月を迎えた世間には、生ぬるい春の風が吹き抜けていた。道路の端には色のあせた桜の花びらが濡れ固まって落ちていた。
この春、私は公立高校を無事に修了し、社会人としての生活を始めつつあった。三年間を共に過ごした周りの友人たち、もそれぞれの決めた道に進んでいった。
肉体労働に従事する人、大学へ進学した人、職を決めずにフリーターの生活を決め込んだ人。
私は、今まで同じ地点にいた友人たちが巣立っていくのを、寂しく思った。急に一人になっても大丈夫だろうかという不安も頭の片隅に確かにあった。学校に通っていた時とは違い、なにもすがるものがないということが、ひどく心細く思えた。
運送会社に勤め始めてから一か月が経つが、まだ仕事らしい仕事は教わっていない。ひたすらわけのわからない書類をまとめるだけで、普通車すら運転させてもらうことができなかった。
四月の中旬頃までは、皆と電話やメールといった形で連絡を取り合っていたが、五月に入るとそれもほとんど無くなった。受信ボックスに一番新しく残っている一通は、ほんの二週間ほど前に参加した花見の招待メールだけだった。
桜の木はほとんど禿げ、緑が萌え出しているものもあった。空は絵の具をぼかしたような色をしていて、太陽もなんとなく輪郭がないように思えた。

その日、私は入社してから初めての休暇をもらった。とはいっても特にすることもないので、散らかった部屋を片付けることにした。
部屋の窓を全開にし、溜まった埃を吐き出させる。額から汗が流れ出る頃には、部屋はもうあらかた片付いてしまっていた。
茶でも飲んで一息つこうと階段を下りている最中、玄関のチャイムが鳴った。出てみると、高校時代からの友人である丹羽だった。
彼は興奮したようすで自分も車を買ったことを告げ、早速私の部屋に上がった。
「掃除してたのか」
 彼はそう言って椅子に腰を落とした。部屋に残っていた埃が舞い、日光の中をしつこく彷徨った。
「そう。休みはもらえたけどすることがないから。お前は?」
「同じだよ。じゃなかったらお前の家にも来ないだろ」
 彼はそう言って笑った。しかし、その笑顔は昔のように長続きはせず、途中で不自然に途切れ、少し大義そうな表情だけが残った。
「仕事の調子は?」
 私は場を取り繕う気持ちでそう聞いた。
「まずまずだよ。失敗はないけど進展もない。」
 彼は健康ランドの従業員として、私と同じ時期に入社した。毎日館内着やタオルをたたむだけといった地味な仕事を割り振られ、少し参ってきたという。
「与えられた仕事に不満はないけど、不安になるよな。こんなことばっかりして本当に貢献してるのかってさ」
「不安になるのか。でも新入りなんてそんなもんだろう」
「うん。仕事って聞くとカタブツなイメージがあったから、最初からきついのを任されると思ってたんだけど」
 彼はそう言って遠い目をした。私は口をつぐみ、できるだけ彼の顔を見ないように努めた。何故かは分からないが、自分の体に確かに流れる鮮血を眺めるような嫌な気分だった。
外からは新一年生の騒ぎ声が聞こえ、徐々に遠ざかって消えていった。

二.

その日を境に、丹羽は不定期的に私の家に遊びに来るようになった。双方の仕事が終わってからになるので、彼が家に来るのは大抵夜の九時を過ぎた頃だった。
彼は私の家に来るたびに、必ずと言っていいほど仕事の話をした。その内容はいつも変らず、それ以上にも以下にも向かわなかった。ただ自分は進展なく生活しているということだけをしきりに話し、そして暗い顔で帰って行った。
そんな生活を繰り返しているうちに、私は次第に彼に対して苛立ちを覚え始めていた。彼は心細いとか、不安だとか、そういう言葉をよく使った。私は彼の口からそういう言葉が出るたびに、体のどこかがむずがゆくなるのを感じた。そしてそれはいつ何時でも尾を引き、私の心を忙しなく荒くした。
その日も、彼は九時を過ぎてから私の家に遊びに来た。外では名前も知らない虫が鳴き続け、空気をむっと湿らせていた。
「ようやく別の仕事をさせてもらえるようになったよ」
 彼はいつもより少し明るい表情でそう言った。
「それはよかったな。受付とか?」
「そう。ロビーの受け付けはまだできないけど、麻雀卓を貸し出したりなんだり」
 彼はそこまで言って、語尾を濁らせた。
「まあまだまだ慣れないし不安もあるけど」
「俺も最近ようやく運転させてもらえるようになったよ。大型は免許がまだ取れないから無理だけど」
 私は少し早口になってそう言った。早く言いきってしまいたいという焦りがあった。
 彼は小さくため息をついて、うなだれた。私はその横顔から、自分と似た弱さを感じ取った。そして、前からずっと尾を引いていた苛立ちがさらに増すのを感じた。
「いろいろつらいこともあるけど、お互い頑張ろうぜ」
 彼は少しはにかんでそう言った。体に力が入っている様子はなく、全体的にだらりとしていた。
次の瞬間、私は自分でも驚くほど自然に激昂していた。近くに置いてあった灰皿をふっ飛ばし、息を荒げて立ちあがった。
「感動ごっこでも、してるつもりかよ。社会人なら、一人で黙って働けよ。それが大人になるってことだろうが」
 彼は目を丸くしておびえていた。私はそれを気にとめることもなく、さらに自分を後押しするような強い口調で、
「もう帰れよ」
 と告げた。
友人が去ってからの部屋は閑散として、先ほどの湿っぽさはなく、乾燥した空気が充満していた。

その後、友人からの連絡は無くなり、私からも連絡を取ることはなくなった。そして、その日を境に尾を引いていた苛立ちは罪悪感と自己嫌悪に変わり、、孤独だけが残る味気ない毎日を過ごすことになった。。
世間に以前のようなぬるい風は無くなり、代わりに大粒の雨がアスファルトを叩くようになった。排水溝のそばには、腐ったような色をした桜の花びらが寄りかたまって沈んでいた。



             了.

けっこう頑張って書きました。
構想に二日ほど、推敲に一日。
そして気付いたことが、掌編って意外と書くのが難しいってこと。
いや意外もなにも、小説を書くのは難しいってこと。
いや、何かをクリエイトするのは難しいってこと。
けっこう学んだことがあって楽しかったです。

作品の解説って自分でするもんじゃないとは思いつつ、簡単にどういうものを書きたかったか、構想メモを参考に記しておきます。

新生活に対する不安や心細さを確かに抱いていた「私」。
丹羽も「私」と同じ不安や心細さを抱いていて、それを「私」に相談してくる。
それによって隠しておきたかった自分の中の弱さを嫌というほど見せられた気がした私は、激昂してそれを払いのけようとした。
でもそのあと罪悪感。

つまり、同族嫌悪は傲慢ですよということです。



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